2011年11月10日

陸山会裁判において2人の対立する弁護士が図らずも一致した判決の正当性

 郷原信郎弁護士はマスコミが小沢一郎議員を裏金疑惑で叩いていたときに小沢批判の問題点を指摘し、一躍時の人となった。それ以降も一貫して小沢議員の収賄疑惑を否定し続け、政治収支報告書虚偽記載事件についても無罪、あるいは軽微な罰(罰金刑)を主張している。
 片や、早川忠孝弁護士は郷原弁護士の主張に反論し、陸山会事件は有罪が相当であるし、小沢議員そのものの疑惑は晴れていないと主張している。
 両者がネットで相対して陸山会裁判について交わした激論は話題になった。

 九月に判決の出た陸山会裁判についてはネット上に両者それぞれが見解を公表している。それらを読むと早川弁護士のみならず郷原弁護士も判決の正当性を認めているように見える。
 早川弁護士はもとからそのような主張だったので当然なのだが、郷原弁護士もご本人の法律論に基づくと不満な点はいくつかあり、かなり強い言葉で裁判所・検察を非難しているけれども、判決そのものは正当であると認めざるを得ないようだ。

 郷原弁護士は、公判前整理手続で裁判官が水谷建設関係者の証人尋問を認めた段階で、今回の判決はほぼ決まっていたのだと言う。水谷建設関係者を証言させるということは検察のシナリオに乗せられたということで、贈賄を認める証言を検察が引き出すのは当然であり、それで判決は決まってしまったのも同然だと主張する。
 驚くべきことに郷原弁護士は、公判前に裁判官が水谷建設関係者の証人尋問を認めただけで、収賄を隠すための虚偽記載という因果関係が成立してしまったと言っているのだ。
 郷原弁護士の主張が正しければ、公判前にほぼすべて決着がついていて、裁判そのものは不要だった。
 だが、被告側弁護人が検察側証人の贈賄証言の誤りを法廷で証明できれば、有罪判決は出ないはずだ。だから、郷原弁護士は被告側弁護人はいても、いなくても同じだったと言っているようにも聞こえる。

 水谷建設元社長は、法廷でかなり詳細かつ具体的に贈賄の状況と行動の足取りを語っている。証言の重みというのは具体性の強いほうが勝る。検察側証人の証言の具体性に対して被告側は反証できず、妄想では無くて自由心証主義に基づいた裁判官の判断を翻せなかった。
 また、宣誓した証人には偽証罪があるが、当事者(原告と被告)には偽証罪の適用はない。だから、当事者が否定したとしても、宣誓した証人である水谷建設元社長の具体性の強い贈賄の証言は、証拠としての高い証明力を有する。これは、検察官取調室のような密室での証言ではなくて、公開の法廷での証言であるから、とりわけ重い。

 小沢擁護派は、訴因変更が大問題であるかのように主張する。だが、公判前整理手続の後、公判中であっても訴因の変更は刑事訴訟法312条1項により認められている。
 判例が無いと言う一部マスコミ司法関係者もいるようだが、東京高裁判決平成20年11月18日の判旨においては、公判前整理手続では争点とされていなかった事項に関し、公判で証人尋問等を行った結果明らかとなった事実関係に基づいて、訴因を変更する必要が生じたときは許されるとある。つまり、下級審判例そのものはある。

 そして、早川弁護士と郷原弁護士との間での最大の争点は、おそらく国民的な関心事ともなっている4億円の出所だ。
 郷原弁護士は、小沢議員からの借入金として収支報告書に記載されているので問題無しとしている。
 その一方で、多くの大手マスコミが追及しているように早川弁護士は、その4億円がどこから小沢議員のところに来たのかが明らかでないことを問題視している。
 郷原弁護士はそこに贈収賄を見るのは妄想でしかないと言うのだが、水谷建設元社長が宣誓した証人として法廷という公開の場で贈賄をしたと証言している。
 とすると、4億円の出所について贈収賄との関連を疑うのは、必ずしも妄想とは言えない。
 4億円の出所を法廷で議論するのは、起訴事実とは無関係だという意見もあるが、収支報告書の誤った記載が虚偽記載なのか、単純な記載ミスなのかの判断の分かれ目は、虚偽の動機・原因が有るか無いかによる。
 4億円の中に賄賂が含まれるのなら、収賄をごまかすためという動機に基づいた虚偽記載となり、虚偽記載の確からしさは強まる。だが、もしこうした動機がなければ、ただの記載ミスにすぎない。
 だから、4億円の出所を明らかにするのは、虚偽かそうでないかの判断の大きな分かれ目となる。
 家族名義の口座から移したという説明もしているようだが、家族名義の口座はマネーロンダリングに使われやすいので、もっと出所を遡らないと贈収賄事件を何度も手掛けている裁判官や検察を納得させるのは難しい。

 陸山会事件を一部関係者は菅家冤罪事件と同じと見る向きもあるようだが、菅家冤罪事件では、完璧な反証としての精度の高いDNA判定があり、それが冤罪を晴らす決め手となった。陸山会事件ではこのような完璧な反証が未だに小沢議員周辺からは示されていない。
 逆に言えば、陸山会事件では、菅家冤罪事件のような完璧な反証を提示できれば、つまり、4億円の出所に事件性が皆無であることを完璧に証明できれば、小沢議員がよく言うようにただの形式犯であって、検察が主張するような実質犯ではなくなる。
 そのためには小沢議員自身が公判で4億円の出所について詳しく証言する必要があろう。



posted by 春眠 at 09:50| Comment(0) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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