2011年12月09日

外交と防衛の核を掌中に収める閣僚

 枝野幸男経産大臣は、12月2日に日本外国特派員協会主催で記者会見を開いている。

 そこで、今後の日本の通商と国内の経済を発展させるための重要な課題について話している。
 枝野は、円高で苦境にある日本経済だが、だからこそ強い円に見合う強い日本経済をつくると宣言した。大量生産低価格で売れる時代はとうの昔に終わっているのだから、経済システムそのものを転換する必要があると訴えている。
 安いから売れるではなくて、高くても買いたいと世界の人々に思われる製品開発の支援に向けて政府は舵を切る。
 そのために、需要創出と創り出した需要の取り込みに主眼を置いた政策を遂行する。

 彼は政策について3点に分けて説明した。

 一つ目が内需を創り出す新産業分野への集中だ。少子高齢化のためのヘルスケア、従来の原発や火力に代わる新しいエネルギー産業、日本の伝統的な価値を生かすクールジャパンの3つの産業を育成する。
 この新産業分野が育てば、それだけで実質GDPを1.3%押し上げることになる。
 イノベーションと需要のサイクルを円滑にするために雇用拡大による世帯の所得アップも重視する。
 中小企業の雇用を活性化し、新産業に見合った柔軟な働き方を支援し、伸びる可能性の大きい女性と高齢者の雇用を生み出す施策をとる。

 二つ目は、グローバル市場の需要の取り込みで、鉄道やスマートグリッドのようなインフラ輸出、日本の伝統文化力を生かしたクールジャパン、中小企業の海外進出支援などで、拡大する世界市場の需要を獲得する。
 そのためには積極的に巨大市場を持つ国・地域との経済連携を強化する。

 最後は、エネルギー生産性の向上で、省エネルギーと再生可能エネルギーを柱とした新しいエネルギー政策を来夏までにまとめる。
 立ち上げの早い省エネルギーに重点を置き、単なるエネルギー使用量削減ではなくて、生産を増大させながらエネルギー使用量を増やさないという効率の向上で臨む。

 今回の外国特派員協会での記者会見は、枝野と日本の経済産業政策を世界に向けてアピールするにはまあまあ成功した。
 それは外国プレスの枝野への対応にも現れていた。

 ポスト近代の経済社会システムの新しいモデルを示し、世界に貢献すると総括したこの記者会見は概ね外国記者からの評判は良かった。

 主催者は枝野の会見をCONCISEだと表した。
 日本人の政治家の発言が外国人記者から簡潔明瞭と言われたことはほとんどない。わかりにくい日本人政治家の話には通訳も苦労するし、外国人も理解に苦しむ。何を言っているのか、よくわからない。
 ところが、枝野の説明は論理的でわかりやすかったようで、他の外国記者も彼が発表した計画は素晴らしいと、計画そのものは称賛していた。
 主催者も枝野を気に入ったらしく、枝野には何度でも(外国特派員協会に)来てほしいと要望していた。
 枝野は日本語で通していた。政治家と外国人とのコミュニケーションで外国語が話せる、話せないということよりも、論旨が明快であることのほうが重要なようだ。

 外国記者からの質問は原発事故と原発政策に関するものが多かった。
 その中でも原子力と海外との関係において、国内に関しては原発依存縮小と明言した枝野経産相は、興味深い返答をしている。
 まず、国際熱核融合実験炉計画への参加については、取り止めとは言わずに、今は難しいとだけ答えている。国内のコンセンサスを得るには、ゼロベースでの議論の中で結論を出すつもりのようだ。未練はあるように見えた。
 原発輸出については、これまでの原発の経験と今回の事故の経験を生かして、海外から要望があれば、受けて行くと答えた。原発の安全性の向上では貢献できるとのことだった。

 原発輸出先では、ベトナムとサウジアラビアが注目されている。どちらもアメリカの外交戦略上重要な位置にある。
 ベトナムは対中の要衝であり、サウジアラビアは対イランの要衝である。
 中国・イランという2つの核保有国に対して、核のパワーバランスをアメリカは望んでいるだろうが、核兵器の拡散は望んでいない。核のパワーバランスのためにベトナムとサウジの2国にアメリカの管理下で原発を持たせるというのは、十分に有り得る外交・軍事オプションとなる。
 アメリカの原発メーカーのGEとWHは日系企業の傘下にある。だから、日米連携のもとで日本企業が原発をこの2国に輸出するのは有り得るシナリオなのだ。

 また、日本のTPP交渉参加によって、他国が動揺している。それは、単に日本が経済貿易交渉に入っただけでなく、米軍のオーストラリア駐留が決定したこととリンクしている。
 TPPが軍事的な意味を持ち、西太平洋に巨大な壁のつくられた中国が焦り出している。
 知的所有権に厳しい制約が課せられ、中国通貨切り上げも要求されるTPPへは中国は参加しにくい。
 だが、日本のTPP交渉参加表明を受けて、アセアン+6、+3での貿易推進の作業部会設置に日本とともに中国は協力するようになった。
 日本のTPP交渉参加とオーストラリアへの米軍駐留は中国へのプレッシャーとなっている。

 枝野幸男がかかわっている分野は、経済・通商という枠組みを超えている。彼は日本で唯一原発という疑似核兵器の海外展開を管轄し、軍事同盟の臭いのするTPPによって他国に外交上の圧力をかけている。
 彼は経済閣僚の名において、外交・防衛の中核を担っている。
 そして、グローバルな展開をテコにして、国内産業の高付加価値化への構造転換を目論む。



posted by 春眠 at 13:42| Comment(1) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
枝野さん恐るべし。
Posted by citizen at 2011年12月12日 11:19
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