2012年01月28日

ハリウッドが求めるオンライン海賊の防止とTPP

 アメリカの議会でオンライン海賊行為防止法案の議論が煮詰まってくるとIT業界から一斉に抗議の声が上がった。
 ウィキペディアは抗議のためにサイトを24時間閉鎖し、グーグルもサイトの名称を黒塗りして抗議した。

 この法案はオンラインの海賊を防止しようというもので、国外の海で暴れる海賊にならって、アメリカ国外で違法コピーをしてオンラインで流す者をオンライン海賊としている。
 この法案は、ハリウッドが熱心にロビイングしていて、国外でのアメリカ映画の違法コピーがアメリカ国内で出回るのを防ごうとしている。
 国内での違法コピーではなくて、国外での違法コピーがアメリカ国内に流されるのをブロックして、アメリカの映像ソフトや音楽ソフトの著作権を守ろうというものだ。

 違法コピーをブロックする責任はアメリカ国内のネットサイトが負わされる。
 アメリカの有名ネットサイトはどこも全世界でつながっているので、国外の違法コピーまで業者が監視していられない。
 政府のネットビジネスへの介入の恐れもあり、自由空間インターネットが権力に侵害されることにもIT業界は反発している。
 アメリカ政府がネットへの介入を強めれば、他国のユーザーが離れて、アメリカ以外で別のグローバル・ネットサイトができてしまうかもしれない。そうなればアメリカのネットビジネスの優位性は失われ、アメリカのIT業界は打撃を受ける。

 だから、この法案を巡る騒動は、ネット産業と映画・音楽産業のアメリカ国内の新旧メディアの対立と見ることもできる。

 ところで、TPP交渉では著作権保護をアメリカは強く訴えるのではないかと言われている。
 これはハリウッドの意向を反映したものだ。TPP参加国がすべてハリウッドの著作権を保護してくれるなら、アメリカのIT業界の著作権保護のための負担も多少は減る。
 だが、TPPには中国が参加しない。
 多くの違法コピーが中国で作られ流通していると言われているので、TPP参加国だけではどうしようもない。

 著作権保護とITビジネスの発展は、ときに利害が衝突する。
 現実での友人同士の貸し借りや売り買いであれば問題にならなくても、ネットで同じことをやると簡単に拡大してしまうので著作権者の損害も無視できないほど膨らんでしまう。

 TPPのアメリカ代表団はハリウッドの利益を代弁し、著作権保護の強化を訴えるだろうが、オンライン海賊行為防止法案の反発を見れば、それが必ずしも現在のアメリカのすべての業界の意向でもないとわかる。
 ただし、国内では対立していても、対外的には別の考え方も生まれる。
 TPP参加国すべてがハリウッドの利益を守ってくれるなら、アメリカ国内のネットサイトの負担が減るから支持に転じるかもしれないし、それでも政治のネットへの介入を嫌がって反発は続くかもしれない。どちらに転ぶかはわからない。

 それにしても、ネットでの著作権保護については、TPPのような地域で話し合うべき課題ではなくて、全世界的な枠組みで話し合うべきだろう。
 もちろん、TPP参加国で統一見解を出して、それを全世界的な話し合いの場に提出するのもあり得るだろうが、そうするとTPPが一つの主権を持つ実在のようなものになるので、そこまでやるのかどうか。
 とりあえず、アメリカが対外交渉で出してくる提案が、アメリカ国内の一部勢力によって推されているとしても、それが必ずしもアメリカ国内すべての要求でないことは知っておいても良いかもしれない。



posted by 春眠 at 17:55| Comment(0) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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