2012年03月22日

再びのメード・イン・ジャパン

 福島第一原発事故は、日本の産業イメージを損なったとも言えるし、そうでないとも言える。
 世界の原発推進派には、1万人以上の被害者を出した巨大地震で、原発事故が直接の原因で死んだ者はいなかったと逆に安全性を誇る者もいた。
 その反面、津波の危険が指摘されていたのに日本の原子力産業はそれに誠実に対応せずにごまかしてきたこともわかり、その他にも事故対策のオペレーションを把握していなかったなど様々な安全管理上の問題が明らかにされ、日本の安全管理の甘さを露呈してしまった。
 福島原発事故は米国製の原子炉だとはいえ、日本の運営上の安全対応の不備があったことは明らかなので、メード・イン・ジャパンの信頼に疑念を生じさせた。

 それでも、震災被害にあった東北の工場から自動車用の部品が供給できなくなると国内の自動車産業だけでなくて、アメリカの自動車産業さえも製造に影響を与えることがわかり、日本の製造業の落ち込みばかりが強調されていたにもかかわらず改めて日本の部品が世界から高く評価されていたことを知った。

 福島原発事故で広く東日本の半分にまき散らされた放射能の影響で、日本からの食品の輸出には海外で規制が続いているが、工業製品については輸出も復活しているようだ。
 生産機械の海外からの受注も大幅に増えているし、2月の貿易収支も黒字に転じている。

 これまで工場が人件費の安い中国への移転が続いていたが、ここに来て国内回帰の流れも出ている。
 アメリカも中国からアメリカ国内に雇用が戻りつつあるようだが、まるでアメリカと歩調を合わせるように日本でも国内への生産回帰が起きている。

 ところで、IBMのPC部門を中国企業が買収したことは、中国経済の影響力増大を象徴する出来事だった。
 日本IBMのPC部門もレノボへと移った。
 日本IBMのPC部門はかつて5550の開発・販売に成功したほどのケイパビリティを有していて、中国企業のもとでどうなるかと心配されたが、PCの研究開発部門は大和研究所として活動を続けている。

 レノボは日本の法人向けPCのカスタマイズ品については日本で生産を始める。
 かつてIBMのコンピュータが日本で製造されていたとき、メード・イン・ジャパンのIBMコンピュータは品質が良いとの噂もあったようで、生産品質の高さは日本の製造業の強みだった。それも、円高のせいもあり、熾烈な価格競争の前では色褪せてしまった。
 レノボは細かいことに煩い日本のユーザー向けに日本での生産を決めたのだろうが、国内向けだけでなくて、高級品については輸出できるようになればメード・イン・ジャパンの本格的な復権となる。
 生産ラインを工夫して、製造コストの中で人件費の占める割合を引き下げる努力も必要となるだろう。
 中国人も中国製の日本製品よりもメード・イン・ジャパンの日本製品を好むという。
 驕りになること無くメード・イン・ジャパンをどう世界にプロモーションしていくかもこれからの課題となる。



posted by 春眠 at 12:04| Comment(0) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月20日

財政苦境にある日本の贅沢な海外投資

 安住財務相が中国政府から中国国債約8640億円相当の購入許可を受けたと明らかにし、中国国債購入の意向を示したとき、人によっては不思議な感じがしたのではないか。
 日本はいつも財政が苦しいと報じられる。GDPの伸びは悪いのに政府の借金だけは増え続けている、将来の社会保障制度を維持するためにも増税しなければならない、本当はギリシャよりも財政状況は酷い、などの厳しい財政状況がいつも声高に叫ばれる。
 それなのに、この時期に突然中国国債を8千億円以上も買うという政府の意向が伝えられる。

 国民にはもっと負担せよと増税だけやたらと熱心な現政権ではあるが、政府は優雅に海外投資をしゃれこんでいる。
 これはまるで国民が飢え死にするのを眼下に眺めながら、老舗料亭の高級料理に舌鼓を打って、海外投資の話に興じている特権階級のようだ。

 東日本の半分が放射能汚染されてしまっている。その被害は深刻で、未だに東日本の食品は海外で輸入規制の対象になっている。
 政府はまともに放射能の害と向き合うこと無く、食べて応援などとキャンペーンを繰り広げているが、世界はまったくついて来ない。
 放射能被害の拡散防止と高濃度放射能汚染地帯の住民、特に子供たちの保護のために巨額の予算を投入すべきなのに何ら具体的な動きは見えず、逆に安全キャンペーンに巨額の宣伝費を費やしている。

 中国国債の購入には、戦略的な意味もあるのだろう。中国が日本の国債を購入しているのに日本が中国の国債を持っていないのはバランスが悪いとか、投資価値があるとか、日本最大の貿易相手国・中国の経済を支える必要があるとか、こういう理由はわからないわけではない。
 だが、こうした理由が納得できるのは、日本にもっと余裕があるときだ。
 今は財政が苦しいだけでなく、東日本の半分が放射能汚染されるという重大な危機に直面しており、優雅に海外投資をする余裕など無いはずだ。
 おそらく財務省のシナリオに不慣れな担当大臣が乗ったのだろうが、国民を見ずに財務省が仕事をしていることがわかる良い事例となった。
 今回ばかりは、世界の経済動向を注意深く観察しながら、タイミング良く金融緩和策を発表した日銀のほうが国民を見ていたことになる。
 こうなると財務省が仕組んだ社会保障制度維持のための増税というシナリオも国民のためではなくて、財務省を守るためにやっているのではないかと勘繰りたくなる。

posted by 春眠 at 14:37| Comment(0) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月16日

原発停止のおかげで日本経済復活の兆し

 1月の日本の経常収支は、過去最大の赤字額となった。
 赤字の内訳を見ると、輸出では中国向けの輸出が減ったことが、大きな赤字要因となった。中国そのものの経済成長が鈍ったというよりは、ヨーロッパ経済危機で中国からヨーロッパへの輸出が減ったので、日本からの部材や製造装置の中国への輸出も減ったようだ。
 経済不振の玉突き現象が起きた。
 もう一つの大きな赤字要因は、天然ガスの輸入が増えたことだ。

 天然ガスの価格高騰もあって、輸入燃料費は上がっている。
 原発停止で、原発分の電力を天然ガス火力で補わないといけないので余計な輸入燃料費が発生している。

 この状況で勢い付いているのが原発推進派と再生可能エネルギー推進派だ。
 原発推進派は「ほら、見たことか。原発を止めると経常収支が赤字になって日本経済を損なうのだ」とほくそ笑む。
 再生可能エネルギー推進派も「だからこそ、原発や火力に代わって国内で自給できる再生可能エネルギーをもっと推進せよ」となる。

 だが、この巨額の赤字は輸出依存型の日本経済にとっては良い面もある。
 この発表の後、円安が一段と進んだのだ。
 この前に日銀が金融緩和策を発表していて、そのときも円安となったが、1月の経常収支大赤字発表でさらに円安が進んだ。
 日銀も金融緩和策の成果がここまで出るとは予想していなかったようだ。

 世界経済が、アメリカ経済の復調に合わせて回復しつつあるので、日本の経常収支赤字と日銀の金融緩和策だけで円安に振れているわけではないが、どちらも大きな要因であることに変わりはない。

 日本の黒字が続いていた経常収支についても、その悪い面を考え直してみる必要がある。
 円高が続くのは、いくら円が高くなっても経常収支の黒字が続くからであって、経常収支が赤字になれば、円は弱くなる。つまり、円安となる。
 円安となれば、日本の企業は再び日本から輸出しやすくなって、国内の経済が息を吹き返す。

 だから、国内産業を弱体化させないためには円高基調にしないほうが良くて、あえて何かを輸入し続けて、いつも円安に振れる状態にしておいた方が良い。
 日本は加工貿易国なので、完成品を輸入するよりは、原料や燃料を多く輸入して、経常収支が極端な黒字に触れないように調整しておく。

 つまり、原発を使い続け、天然ガスの輸入を抑えることで、経常収支の黒字が増えてしまい、円高に振れて、国内の経済が苦しくなるので、原発を停止して天然ガスを輸入し続けることが日本の国内経済の強さに通じる。
 もちろん、天然ガス価格を引き下げる努力は必要で、北米の天然ガス価格はシェールガスの登場で極めて安くなっている。燃料調達先を広げれば、天然ガス価格を下げることはできる。

 天然ガス輸入の急増で経常収支赤字になり、円安に振れたことで、実はこれまで日本は原発を使用していたから日本の経済が停滞し続けていたのではないかとの疑念が生じる。
 全原発停止でしばらくやってみたらいい。

posted by 春眠 at 13:51| Comment(0) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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