2012年02月06日

沖縄基地移設と議会と政府の関係

 沖縄の基地移設問題は、グアム移転を先行させるとの日本政府関係者の話によって、動きが慌ただしくなってきた。
 グアム移転と辺野古移設は同時と主張してきた米国政府も軟化したように見える。

 普天間という一つの飛行場をどこに移設するかは軍事戦略上のテクニカルな問題で、米国政府としての重大な政治課題とはならない。
 移設が進まなければ、アメリカの政治リーダーは業務が滞っているという見方をするだけだろう。アメリカ政府には仕事のできない官僚がいると思う。

 ところで、グアム移転を先行させた大きな理由は、昨年11月の米軍のオーストラリア駐留決定だろう。これはベトナム戦争後、アジア地域でのアメリカによる最大の軍事的な決定と言われている。オバマもこの決定に持ち込んだことには自信を見せていて、アメリカの防衛予算を削ってもアジアを犠牲にしないと力強く宣言した。
 沖縄の地元民とすれば、アジアを見捨ててくれてもいいのにという思いもあるだろうが、この米豪の決定で、米海兵隊移転先のオプションが増えた。
 しかも、フィリピンまでが移転先の候補になっている。
 それにプラスして、トモダチ作戦のときにヘリ空母を、機動力を発揮して運用できたことも常駐軍隊の必要性を減じていると思う。

 ここは正念場とばかり、帰国したばかりの沖縄市議団に続いて辺野古のある名護市の市長がアメリカに向かった。アメリカの議員や官僚、政策研究者たちとのミーティングが予定されているようだ。
 外交交渉の場合、防衛関連はかなり専門的なため、議会が細かな交渉に口出しすることはない。戦争を始めるときも、ホワイトハウスの計画を議会は承認するくらいで、戦争の計画は大統領や側近のスタッフ、軍人、行政機関で策定される。
 議会にとって関心を払うべきは、細かな内容よりも予算と大きな枠組みのほうだ。

 今回はいつもは日本を叩くアメリカ議会が日本に同情を示している。
 日本が輸出大国だった80年代は、アメリカ議会が日本を叩きまくり、アメリカ政府が日本を擁護した。大統領が拒否権を発動できるアメリカで、議会の力は制限されている。
 アメリカ議会が同情してくれているといっても、日本政府がアメリカの交渉担当窓口をスキップしてアメリカ議会に頼るのも、別の意味で問題だろう。万が一アメリカ議会に頼ると別の案件で日本がアメリカ議会に叩かれたときにアメリカ政府が日本を擁護してくれなくなる恐れもある。

 とはいえ、民意に近いところにいる日米の政治家が、政府間交渉とは別に交流するのは日米の相互理解のために悪いことではない。
 細かな外交交渉はどうしても専門家としての官僚、それに防衛関係なら軍人の発言力が強くなるが、民意に基づいて選ばれた議員の声が大きくなれば、基地移設のような細かな内容であっても、それを無視できず、外交官も軍人も別の方法を考えざるを得ない。

 普天間基地問題は、多くの問題を抱えるアメリカにとって最重要の課題ではないだろうが、日米両政府にとってちょっと複雑な外交案件となっている。



posted by 春眠 at 17:08| Comment(0) | 外交・軍事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月05日

進展しそうな沖縄の基地移設

 今日、毎日新聞は日本政府関係者の話として、沖縄基地移設に関してグアム移転を先行させると伝えている。
 米海兵隊の移転先はグアムだけでなく、ハワイ、フィリピン、それにオーストラリアが含まれるという。
 この移転先を見ると明らかに中国の海洋進出、特に南シナ海域への中国海軍の脅威を意識したフォーメーションとなっている。

 フィリピンはかつて国内の米軍基地を閉鎖し、米軍を撤退させた過去があるのに再び新たに米軍を受け入れるというのは驚きでもある。
 もしフィリピンによる米海兵隊受け入れが本当に進むなら、フィリピンが軍事大国・中国のフィリピン領海域への進出に対する強い懸念を明示することになる。
 また、オーストラリアへの米軍駐留については、昨年11月にオバマが興奮して発表しており、オーストラリア政府からも歓迎されている。
 西太平洋の米軍を沖縄に集約するのではなくて、西太平洋諸国に分散して配置することで、中国海軍への壁をつくることができる。軍事戦略的には、通信機器の発達で分散型の配置でも、まとまったオペレーションができる技術はあるので、悪い案ではないだろう。

 ただ、このニュース源が、日本政府関係者となっているのが気になる。官邸なのか、防衛省なのか外務省なのか、政務三役なのか高級官僚なのか、中堅官僚なのか、これは観測気球で流されたのか、かなり煮詰まった実際の話なのか。ニュース源の意図も入っているはずなので、そこが不明となっているのがむず痒い。

 そして、グアム移転を先行させることで普天間に固定化するかどうかは、今後の日本政府の対応次第だろう。
 昨年の震災後にアメリカ議会の軍事関係の重鎮議員であるレビンとマケインが普天間を既設の嘉手納に統合し、辺野古への移設を諦めるようにと発言している。嘉手納統合案は地元にも反対はあるが、かなり歩み寄った意見ではある。
 アメリカ議会でこのような発言が出た理由は、日本には大震災で移設の費用が無いだろうということだった。
 だが、その他に、東日本大震災のトモダチ作戦で、米国本土を母港とする空母ロナルド・レーガンによる非常に効率的なヘリコプターのオペレーションができたことも、米軍が日本駐留に拘る理由を薄めたと思う。
 それでも、西太平洋の壁に振り分けられる兵力が全体として減ると、中国海軍の海洋進出への防御での弱さを見せることになるので、軍事関係者は総兵力は維持したいと望むだろう。

 沖縄の市議団もアメリカの議員と交流しているようで、議員間の理解は深まっていると思うが、軍事戦略、軍事戦術については、米国防総省は議員よりも米軍の意見を尊重するだろうから、議会の意見と行政の意見の食い違いも出て来る
 日本でもよくある政府と議会の対立のようなものだ。
 行政の論理・都合と議員の背後にいる人々の思いはしばしば矛盾し、対立する。

posted by 春眠 at 11:43| Comment(0) | 外交・軍事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月19日

米軍のオーストラリア駐留

 アメリカのオバマ大統領が、11月16日、17日と相次いで、アジア地域における米軍のプレゼンスの拡大を発表し、これをニューヨークタイムズをはじめとする米国の主要メディアは一斉に報じた。
 このプレゼンスの拡大は、ベトナム戦争終結後のアジア地域の米軍にとって初めてのことであり、その持つ意味の重要性が見えて来る。

 驚くべきことに、米軍はオーストラリアに2500人の海兵隊を常駐させることを決めた。将来的には航空部隊も配置するという。

 これはベトナム戦争後初のオーストラリアとの間での米軍の長期駐留における合意であって、中国封じ込め政策を始めたのではないかとの疑念が中国政府高官の間に生まれている。
 中国外務省スポークスマンはこの決定に関して、この地域で軍事力を拡大するのは不適切であり、この地域の国々の利益にならない、と反発している。
 空母を建造するなど海軍力を強化し、その経済成長力でもって先進国を取り込み、アジアでの軍事プレゼンスを好きなように拡大してきた中国にとって、今回のアメリカとオーストラリアとの軍事的合意は量的にはたいしたことは無くとも、地政学的に重要な意味を持つ。

 オバマは17日のオーストラリア議会での演説で、オーストラリアへの米軍駐留決定に関してかなり踏み込んだ発言をしている。
「計画的かつ戦略的な決定である。環太平洋国家としてのアメリカは、この地域の未来作りのために、より広範で長期的な役割を担う。国防予算削減でアジアを犠牲にすることはない」
 これを字義通りに解釈すれば、拡大する中国の潜在的脅威に対して、アメリカがアジアの同盟国を見捨てることなく長期的にコミットしてくれると見ることができる。
 だが、当然のことながら、そこにはTPPが念頭にある。アジアでのアメリカの軍事的プレゼンスの拡大は、一方で経済的プレゼンスの拡大も視野に入っている。アジアでのアメリカの軍事力増強は、アメリカにとって経済的に十分にペイすると読んでいるのだろう。
 オバマは中国側の警戒心については、中国封じ込めの意図は無いと説明し、中国もTPPに参加するように呼び掛けている。だが、もちろん中国が現状のTPPの自由貿易のルールのもとでは参加できないことを知っている。
 アメリカは、これまでの中国との2国間交渉では、常に中国通貨切り上げ交渉が不調に終わっていた。
 中国のTPP参加とは中国通貨切り上げを意味する。また、日本をはじめとする先進国を悩ませている中国の知的所有権の問題にも切り込むことになる。
 オバマは中国との経済交渉において連敗していたのだが、今度のTPPとアジアでの軍事プレゼンス拡大によって、中国の喉元に匕首をつきつけた。オバマは、中国の警戒心を宥める発言をしているが、心中察すると、してやったり、の思いだろう。
 アメリカといえども、もはや1国だけでは中国パワーには対抗できない。日本が1国では中国とやりあえないのと同じだ。地域間連携によって超大国・中国に圧力をかける。

 オバマは16日にもオーストラリアとの軍事関係強化に言及していて、それを韓国、日本、フィリピンからオーストラリアにつながるセキュリティ・アーキテクチャの一環であると言っている。
 インタ−ネットに詳しいオバマらしい言い方だ。セキュリティ・アーキテクチャとは、インターネットが外部の違法な侵入者をブロックするための暗号化技術のことだ。
 もちろん、セキュリティには軍事面の安全保障という意味もある。
 ダブル・ミーニングを持つこの言葉をインターネット用語のしゃれた流用ではなく、別の意味で解釈するなら、安全保障の構築という意味があり、地政学的戦略として考えれば、環太平洋安全保障構想となる。
 こうなると、この構想の向かい合う相手は中国だけでなく、最近独りよがりの外交政策が目立つロシアもそこには含まれよう。

 このようにTPPは環太平洋防衛構想とも連動しており、日本が戦略的にTPP参加国との協力関係を構築できれば、ロシアや中国に対して抱えている未解決の外交問題の解決を促進する触媒となり得るのではないか。
 問題は、日本の外交にホリスティックでダイナミックな戦略性が欠如していることにある。グランド・デザインを描けない、グランド・デザインを世界に向けて発信できない、だけならまだいいが、他者と協力したグランド・デザイン作りにも貢献できていない。それがこれまでの日本外交であり、成熟国家の日本がこのままではまずいのだから、今度のTPP参加により日本は成長するべきだろう。
 もちろん、成長云々の問題ではなく、日本人の民族的特性までは変えられないのだから、外交交渉そのものが2国間であれ、多国間であれ日本には向いていない、という意見もあるだろうが。

posted by 春眠 at 07:44| Comment(0) | 外交・軍事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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