2012年03月26日

原発廃炉に向けた放射能廃棄・放射能隔離技術の開発による内需開拓

 柏崎刈羽原発6号機が25日深夜、定期検査のために停止し、これで現在稼働中の原発は泊原発3号機の1基だけとなった。
 これから原発再稼働の議論が熱くなっていくだろうが、反原発派は再稼働はやめてほしいと希望しているし、中立派でも原発以外で電力の代替ができるなら、原発を止めて構わないと思っているように感じる。積極的な原発推進は、国民の中では少数派となったと思う。

 原発が不要となれば、全原発が廃炉となる。
 廃炉は、一般的な構造物の解体、廃棄ほどは簡単で無く、付着した高レベルの放射能が拡散しないように封じ込めていかなくてはならない。また、作業現場での被曝も避けるようにしなければならない。
 廃炉については、海外ではいくつか事例があり、日本でもやっているようだが、効率的で安全な方法があるわけではない。
 日本でこれから次々と廃炉になるのであれば、世界の原子力産業の経験と知識を生かして、廃炉技術も開発しながらの廃炉作業となる。
 最初の数基の廃炉では、技術開発もやっていくこととなるので、時間がかかる。小さな実験とシミュレーションを繰り返しながら、1工程ごとに方法や技術を見直し、洗練させていく。

 優れた廃炉技術が開発されれば、海外でも老朽原発は増えているので、海外でも活用されるだろう。
 原発による発電事業ではなくて、廃炉とその技術開発は必要悪としての内需となり、また外需にもなり得る。原発が停止しても、原発にかかわる別の経済活動が始まる。

 廃炉の前段として、今回の放射能付着廃棄物の処理も考える。
 放射能の付着した廃棄物は、震災ガレキだけでなく、放射能汚染地帯の多様なゴミもだ。
 焼却後の焼却灰の放射能汚染レベルが高すぎて処分できない焼却灰も大量にある。

 これだけでなくて、草木も放射能汚染されているため、落ち葉や伐採した木からも当分の間は放射能が検出され続けるだろう。
 また、放射能汚染の激しい森林地帯では、落ち葉を集め、間伐することで徐々にではあるが、森林の放射能レベルを下げることができるので、長期的かつ積極的な除染を行うことにすれば、放射能付着廃棄物は増える。

 これらを管理しやすくするには、議論はあるようだが、今のところ焼却するしかないようだ。大量の放射能付着廃棄物をそのままで保管するのは物理的に不可能だろう。そのまま埋め立てても、降水量の多い日本では、すぐに環境中に染み出してしまう。

 焼却設備で使われるバグフィルターは、放射能除去を念頭につくられたものではないようだが、放射性物質も金属の一種と見れば、除去できないということもなく、排気系での冷却機能が働けば、かなり放射性物質も除去できるようだ。
 バグフィルター通過時に200℃以下になるので、セシウム化合物は固体に戻り、セシウム単体でもガスから液体に戻るのでフィルターで取りやすくはなる。
 ただ、液体だと排気ガスの圧力でフィルターをすり抜けてしまうかもしれないし、固体でも隙間を抜けないわけではない。
 よりうまく冷却システムが働くような焼却システムの開発が必要になるだろうし、さらに排気系の出口に高性能フィルターをつけておく必要もあるだろう。
 経済的にはこれら焼却システムの高度化だけでも内需が増える。フィルターの安全性を高める努力で経済が回せるのであるから是非取り組むべきだろう。

 焼却灰の処分についても、管理型処分場は比較的環境とは隔離されているが、露天なので大雨が降ると土が流れ出てしまうので、放射能を焼却灰から分離して、さらに体積の小さくなった放射能部分は環境と隔絶された格納庫で保管する。
 そのためには放射能分離設備の開発も必要となる。物質の融点の違いを利用した溶融分離の仕組みを使うことなどが考えられる。
 また、放射能を集約していけば、放射線量も上がっていくので、放射能防護の仕組みも必要となる。
 これも、多くの環境技術や化学技術、機械技術、建設技術などが必要となるので、それで経済活動を回せる。

 このように安全性を高めた放射能付着廃棄物処理、放射性廃棄物処理、廃炉の技術を開発し、運用するだけでも、関連する産業分野も広がり、必要悪としての内需拡大となり、放射能廃棄が経済の成長分野となる。
 これは国民的課題であるし、その経済効果を広げるためにも、原子力村や大企業だけで抱え込まずに、機械、化学、環境の技術を持ち、ノウハウが適用できそうな多くの中小企業、他分野の大学の研究者も含めて、取り組むべきだろう。
 これら大中小の企業と科学者、市民団体、自治体担当者を一同に集めた放射能廃棄の一大国民会議を開催しても良い。



posted by 春眠 at 09:09| Comment(0) | 原発・放射能・自然エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月25日

原発停止による経済成長

 日本では、原発を推進することで、80年代のバブル崩壊以降停滞していた経済を成長軌道に乗せようとの意図が311前にはあった。
 地震でも重大事故が起きないとされていた日本製原発は、メード・イン・ジャパンの品質と安全性を証明するもと理解(錯覚?)されていた。
 政府はメード・イン・ジャパン原発を輸出しようと支援し、日立や東芝といった重電メーカーは会社の経営資源を原発に集中させていった。
 テレビなどの電化製品は、他のアジア諸国で生産される製品に価格で敵わないため、高度な技術が集約されているように見える原発でアジアの電機メーカーと差別化をしようとの戦略は一見正しい。
 また、日本国内でも二酸化炭素削減目標を達成する手段として原発が持て囃され、国内の電力の半分を原発で賄うというエネルギー政策が311前は打ち出されていたので、内需によっても原発メーカーは儲けることができた。

 だが、311が無くても日本の原発が世界での競争力を維持できたかどうかは疑わしい。
 311前からすでに韓国メーカーには海外での原発受注競争で負けていたし、今後は中国が国内での原発利用をテコに海外進出するだろうから、日本の原発産業も他の電化製品と同様にすぐに価格競争力で敵わなくなる可能性が高かった。
 原発のような重厚長大型産業の造船業が日本から韓国、中国へと移っていたのと同じ流れを原発もなぞるだろう。

 韓国やこれから出て来るであろう中国の原発メーカーと国際市場で競争するのは容易ではなく、そのためには日本政府の経済的支援とのパッケージが必要ともなる。
 311以降の国民は、国内での原発推進だけでなく、原発輸出に過度な政府支援をつけることにも反対するだろう。

 一般的に日本の経済界は原発推進のようだが、国内の産業界の状況を見ていると陰では原発停止を見込んでいるような動きも見られる。
 大手商社は、積極的に北米のシェールガス開発に乗り出しているし、海運会社もLNG輸入増加に合わせてLNG船を増やそうとしている。
 また、コジェネ業界が潤ってきているという話も聞くし、コンビニチェーンが省エネ策のヒートポンプを導入したというニュースもあった。
 シャープは、太陽光パネルの販売だけでなく太陽光発電所の運営を始める。
 風力発電については、風力タービン・メーカーだけでなく、風力発電設備に必要な部材を提供するメーカーにも良い動きがあるようだ。

 つまり、原発が停止したことによって、その分を他のエネルギーで賄うためのビジネスが活況になる。
 たとえば、天然ガス依存が増えれば、それを運搬する海運業は活性化され、天然ガスを運ぶ手段としてのLNG船を製造する造船業も活性化し、LNG船に搭載される制御機器や部材、鋼板などの産業も活性化する。
 当然、LNG船が寄港する港周辺も活性化するし、LNGを国内で備蓄し、運搬する事業も活性化する。

 政府も、原発を停止するのかどうかをはっきりさせないと、原発停止を見込んで産業界の水面下で進む構造変化の流れに水を差すことになりかねない。
 原発が成長できないことによって成長できる別の産業があるということを忘れてはならない。

posted by 春眠 at 10:39| Comment(0) | 原発・放射能・自然エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月22日

再びのメード・イン・ジャパン

 福島第一原発事故は、日本の産業イメージを損なったとも言えるし、そうでないとも言える。
 世界の原発推進派には、1万人以上の被害者を出した巨大地震で、原発事故が直接の原因で死んだ者はいなかったと逆に安全性を誇る者もいた。
 その反面、津波の危険が指摘されていたのに日本の原子力産業はそれに誠実に対応せずにごまかしてきたこともわかり、その他にも事故対策のオペレーションを把握していなかったなど様々な安全管理上の問題が明らかにされ、日本の安全管理の甘さを露呈してしまった。
 福島原発事故は米国製の原子炉だとはいえ、日本の運営上の安全対応の不備があったことは明らかなので、メード・イン・ジャパンの信頼に疑念を生じさせた。

 それでも、震災被害にあった東北の工場から自動車用の部品が供給できなくなると国内の自動車産業だけでなくて、アメリカの自動車産業さえも製造に影響を与えることがわかり、日本の製造業の落ち込みばかりが強調されていたにもかかわらず改めて日本の部品が世界から高く評価されていたことを知った。

 福島原発事故で広く東日本の半分にまき散らされた放射能の影響で、日本からの食品の輸出には海外で規制が続いているが、工業製品については輸出も復活しているようだ。
 生産機械の海外からの受注も大幅に増えているし、2月の貿易収支も黒字に転じている。

 これまで工場が人件費の安い中国への移転が続いていたが、ここに来て国内回帰の流れも出ている。
 アメリカも中国からアメリカ国内に雇用が戻りつつあるようだが、まるでアメリカと歩調を合わせるように日本でも国内への生産回帰が起きている。

 ところで、IBMのPC部門を中国企業が買収したことは、中国経済の影響力増大を象徴する出来事だった。
 日本IBMのPC部門もレノボへと移った。
 日本IBMのPC部門はかつて5550の開発・販売に成功したほどのケイパビリティを有していて、中国企業のもとでどうなるかと心配されたが、PCの研究開発部門は大和研究所として活動を続けている。

 レノボは日本の法人向けPCのカスタマイズ品については日本で生産を始める。
 かつてIBMのコンピュータが日本で製造されていたとき、メード・イン・ジャパンのIBMコンピュータは品質が良いとの噂もあったようで、生産品質の高さは日本の製造業の強みだった。それも、円高のせいもあり、熾烈な価格競争の前では色褪せてしまった。
 レノボは細かいことに煩い日本のユーザー向けに日本での生産を決めたのだろうが、国内向けだけでなくて、高級品については輸出できるようになればメード・イン・ジャパンの本格的な復権となる。
 生産ラインを工夫して、製造コストの中で人件費の占める割合を引き下げる努力も必要となるだろう。
 中国人も中国製の日本製品よりもメード・イン・ジャパンの日本製品を好むという。
 驕りになること無くメード・イン・ジャパンをどう世界にプロモーションしていくかもこれからの課題となる。

posted by 春眠 at 12:04| Comment(0) | 政治・経済・社会・文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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